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   疲労した宍戸をプールサイドへ上げると、何とか、彼は自分で歩こうとしたが、すぐに

   アスファルトへと腰を下ろしてしまった。

   「宍戸さん、すみません。また、無茶な事をしてしまって……。」

   自分のせいで腰を痛めたので、宍戸は歩け無いのだと、鳳は思って謝った。

   しかし、宍戸は大きく頭を横に振り、否定するのだった。
  
   「違ッ! そうじゃなくて……。あっ!」

   鳳が、宍戸を抱き上げると、おかしな悲鳴を彼はもらした。

   そのまま、鳳の腕の中で、モジモジと足をすり合わせるようにしている。

   鳳が気がついて、宍戸の下肢に視線を向けると、彼の大腿が激しく濡れているのがわかった。

   宍戸の尻から、まるで漏らしたように大量のプールの水と、鳳の吐き出した精液が滴っている

   のだ。見る間に、アスファルトに染みが広がっていった。

   「嫌だ。見るなよ、馬鹿ッ!」

   涙で滲んだ瞳で自分を睨んでいる宍戸の様子に、鳳は、また、どんても無い状態になって

   しまった。二度も射精したと言うのに、暴れん坊が、また鎌首を持ち上げてしまったのだ。

   興奮して、鳳が、宍戸の身体へと腕を回すと、宍戸は、真っ赤な顔で怒り始めた。

   「良い加減にしろッ! お前ってヤツは! お前ってヤツは!」

   さすがに、宍戸は、飽きれた様子で、鳳の行動を拒否してきた。いくら何ても、もうセックスが

   できるような状態では無いと思われる。

   「宍戸さん。違いますよ。 シャワールームで、身体を洗いましょう。

    俺が、宍戸さんを洗ってあげますからね。

    大丈夫です。俺に任せてもらえれば……。」

   「任せられるか! このボケッ! 」

   色欲で興奮して鼻息も荒い男の言う事など、信じられるわけがない。

   いくら何でも、宍戸も、この鳳の嘘には、引っ掛かってはくれなかった。




   鳳が、今日、宍戸を自宅へ招いたのは、テニスの練習をするだけでなく、最初から、

   宍戸と愛の行為を行うためだった。


   宍戸は、考えてもいなかった様子だが、鳳は、ずっと、宍戸の身体へ触れるチャンスを

   狙っていたのだ。
プールへ誘ったのは、当然、下心があったからだった。

   学園では、毎日、会う機会があったのだが、夏休みに入ると、部活を引退している宍戸とは、

   そう滅多な事では会えないからだった。


   鳳は、毎晩、宍戸の夢を見てしまう。


   彼のいない生活は考えられなかった。


   毎日、彼と一緒に過ごしたい。


   彼を抱きしめたい。


   セックスをしたくて、たまらない。


   鳳は、どうやって、今日は宍戸を引きとめようか、懸命に考えていた。


   一分、一秒でも、彼と一緒にいたい。

   宍戸を帰宅させるつもりは、鳳には初めから無かったのだ。

   怒った恋人に頭を叩かれながら、鳳がどうやって彼を引きとめようか策略を練っている事に、

   まだ、宍戸亮本人は気がついていなかった。

   いっそ、宍戸が帰り道に使う道路を、<工事中>として封鎖してしまおうか、

   と鳳が本気で考えていた事を、一般市民の宍戸は知るよしも無かった。

   恋人と一緒にいるためならば、故意に<水道管をハレツさせる>くらいワケもない。

   旧華族の家柄である鳳家の跡取り息子は、そんな思考の持ち主だった。

   恋する男の思考回路は、凡人には到底、理解できないものである。




        その2 季節外れの花火大会へ続きます!行ってみる→



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